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呪い本?

友人にすごい本があると教わり、読んでみました。

確かにすごい本でした。
面白すぎて一晩で一気に読んでしまいました。
すごすぎて笑ってしまいました。
著者は某大学講師で博士だそうです。

本のはじめには「賢治とは何者だったのか、今解き明かす」とあります。
しかし・・・。

10年賢治の研究をして毎年花巻にも行かれるそうですが
結局「やればやるほどわからない」のだそうです。

 《「賢治目撃者」たちによる曖昧な証言と、賢治の遺族ととりまき学者たちによる賛美に満ちた伝説、そして賢治の影の部分を探っていこうとする評論。こうしたものがごちゃ混ぜとなり、今日まで「伝説」として語り継がれる賢治のエピソードが残ってきたと言えるだろう。》

こう書きながら、それらの論文なり文章をそのまま寄せ集めて
並べているだけで、真偽を検証するでもなく
鵜呑みにしている矛盾と怠慢。

参考資料をみてみるとかなり偏っている、
と感じるのは私だけではないと思います。

これはまるで週刊誌のゴシップ記事ばかりを集めて
人を評価しているのとまったく同じ事ではないでしょうか。

読んでも読んでもわからないので、著者がたどり着いた結論は
賢治文学は「呪われて」おり、
それを有り難がって読む賢治ファンもまた、とりつかれ呪われているのだそうです。

疑問に思う点は挙げればきりがないほどです。
たとえば著者は賢治が
「死の直前、満州に兵隊として派遣されている知人への手紙の中で」
「うらやましい」と書き、「戦争に対して消極的ではなかったようだ」
と書いています。
果たしてそうでしょうか。

わたしが調べたところ、
この“手紙”とは、昭和8年8月30日付・伊藤与蔵宛てのものでした。
私はこの全文を読んでみましたが、このどこからも、
戦争を肯定するような意味に取れるところを見つけられませんでした。
むしろこれは長い病床の身にある賢治が、
戦地にいる人に宛てて「たいへん気を使ってしたためられた手紙」としか
私には見えませんでした。

字面だけとらえればたしかに「うらやましい」と書いてあります。
しかしこの方は大学講師で博士のはずですが・・・・?
この本を読んで、私にはとうていこの著者が、
賢治の作品をちゃんと読んでいるとは思えませんでしたが
たしかに「読む力」がなければいくら読んでも「わからない」でしょう。
読んで自分の頭で考えるという事をしなければ
混乱するばかりです。

みんながいい、いいといって読むものを自分がわからないから
結局わからないのは書いた人間もそれを喜んで読んでいる人間も
みんなおかしいのだ、と言いたいのかもしれません。
分からないものはわからないでよいではありませんか。

つまりは呪われているのは、著者自身だと私は感じましたが・・・


たしかに、無責任でいいかげんな「伝説」があることは否めません。
ただひとつだけ、この本の功績をあげるならば
それらを浮き彫りにしたこと、と言えるでしょうか。


でも、私はこのような人の講義を受けなければならない学生さんたちが
気の毒でしかたがありません。
私なら、教育者ならなおさら、恥ずかしくてこんな本は出せませんが・・・。
ちゃんと勉強したいなら、
大学もきちんと選ばないといけないということでしょう。


言い過ぎましたか?
今日はちょっと、この本の「呪い」に当てられたようです。
by signaless5 | 2009-06-29 18:22 |